犬のレントゲンを撮影しました!!

私は整形外科のクリニックに勤める診療放射線技師です。
普段は人間の患者さんのレントゲン写真を撮影します。
それが、我ら技師の中心的な仕事であります。
なのになぜ、犬のレントゲンを撮ることになるかって!?
そういう雑用(?)が舞い込んで参りました(汗)
犬のレントゲンを撮るという雑用(?)
仕事の時間が1日のうち8時間あるとして、ずっと引っ切りなしに検査業務に関わることは、まず当院ではありえません。
それなりの規模の病院でいつも予約がいっぱいのMRI検査や、手術関係(透視といって、レントゲンの動画の様なもの)などの限定的な場面ではあり得るかもしれません。
小規模なクリニックに勤める技師は、検査業務の密度という意味で考えると暇が多いので、その暇を埋めるように種々の雑用をこなします。
私の場合は、現在主要な雑用として、医療事務の仕事の手伝いをしています。ほぼ事務的な作業の裏方です。
なので、様々な医療上での公費、交通事故・労災での受診の仕方、レセプト(診療報酬明細書)関連のことなど、技師としては不必要ですが、医療人としては知っておいて損はない多くの情報と関わって仕事ができています。
割と聞く話では、クリニックに働く技師は事務の仕事もこなすパターンが多いため、事務長を兼務している場合があります。
私は、いまのところそこまで重要な仕事は任されていませんが、肩書きはなくとも先を考えるといずれそのようになっていくのか、、、
それはさておき、ある日、副院長に呼ばれて話がありました。
(うむ、何かお願い事があるに違いない、、、)
何を言い出すかと思えば、開口一番、「犬のレントゲンを撮って下さい。」です。
あれ?聞き間違えたかな???
「犬って、あの、DOGのことですか? 🙄 」
「そうそう、ウチの愛犬なんだけど、、、 😕 」
どうやら、副院長のペットの犬が呼吸が少しおかしい時があり、肺を確認したいとのことでした。
肺つまり胸部レントゲンと言えば、大人であれば何度も経験したことのあるやつです。
健康な人でも検診なんかでしたことがあるでしょう。
機械に胸を付けて、「息を大きく吸ってー!止めて下さい!!」のヤツです!
犬のレントゲン撮ったことないけど、、面白そうだしいっか!! 😉
犬の胸部レントゲンの撮り方
さて、犬の撮影はどうやるものか?検査前に考えることがいくつかあります。
まず撮影条件は?
というか、「撮影条件って何?」という声が聞こえそうですが、レントゲンを撮る時、技師が奥に引っ込んで何かを触り「ピッ!ピッ!」と機械音がして何かしらをイジっているアレです(笑)
撮影時、技師は『管電圧(kV)』『管電流(mA)』『撮影時間(sec)』の数値を決定しています。これらの数字が撮影する条件のことです。
「えっ!?電気???」と思ってますか?
レントゲン装置の内部では、高電圧回路により数十~数百kVの電圧がかかり、そのエネルギーにより発生した熱電子がターゲットに衝突することによって、X線が発生されます。
分かりやすくは説明しません(笑)
ざっくりいうと、X線の『質』と『量』を決めていると思って下さい。
『質』・・・『管電圧(kV)』を調整し、目的によってX線の透過力を変える。肺の中を見たい場合は高電圧、乳房やアキレス腱などの軟部組織を見たい場合は低電圧といったカンジ。
『量』・・・『管電流(mA)』と『撮影時間(sec)』を単純に掛け合わせた値『mAs値(マス値)』をX線の量としています。じっとできない人は撮影時間を下げて、管電流を上げたりして、ぶれない写真を撮ろうとか考えています。このmAs値が多すぎても少なすぎてもきれいな写真が撮れないので、体格や状況を考慮して調整します。
条件をどうしようか考えましたが、
犬のサイズ的にも、小児の胸部撮影にあやかって、また犬はじっとできないと想定して、100kV、100mA-0.01sec(1mAs)にしました!
撮影距離は、撮影台での撮影で取れる距離120cmにしました。
それともう一点。ポジショニングは?
撮影する時の姿勢のことです。
情報は多い方がいいけど闇雲に撮ってもしょうがないので、2枚撮ってみることにしました。
『正面像』・・・伏せの状態で、真上から写す写真。
『側面像』・・・立った状態で、真横からの写真。
実際に撮影してみる
どんな犬かなと思ってましたが、トイプードルの13才(老犬)でした!
言うことは聞くし大人しい子でしたが、慣れない場所に来たので興奮気味でした 🙂
撮影台(ブッキーテーブル)に乗って、その下(テーブル内部)にカセッテ(写真を写し込む黒い板)をセットします。
犬は伏せの状態で、真上からX線を照射すると正面像が撮れます。
2人がかりで犬を抑えました(´д`)
盲点だったのが呼吸です。
今回は肺を見たいので、息を吸った時(吸気)での肺が大きく膨らんだ状態で写真を撮らないと、広い範囲でしっかりと肺が観察できません。
犬の呼吸に合わせるって、慣れないとさすがに無理でした 😕
ジタバタするのを抑えて、止まった瞬間に撮影するのでやっとのこと。。。
技師的には2点の改善する余地があると感じました。
体がまっすぐした状態で撮影できなかったポジショニングのことと、おそらく呼気(息を吐いたタイミング)で撮影しているためか肺が小さく感じます。
犬の正常解剖がちょっと分からないので何とも言えませんが、もしこれが正しく撮影されてるとしたら心肥大(心臓が大きい)してるようにも見えるかなぁ 😐
次に側面像ですが、犬が普通に立った状態で、体の横にカセッテを添えて撮影してみました。
が、お座りの状態から動かなくなった(笑)ためそのまま撮影しました!
こっちは割と良いタイミングで撮れてるかな。
目立って肺に炎症があるようには見えないし、ましてや胸水がある像も見えない。
副院長より、「まぁダイジョーブそうだね。ありがとう!」ってことで終了しました。
個人的には、犬のレントゲン見て、
- 頭蓋骨も骨盤も小さい
- 歯がめっちゃ写ってる
- 頸椎が細長目
- 手足も肋骨も細くて折れそうだなぁ
とかどうでもいいことを感じました(笑)
普通に放射線技師してたらきっとないだろうの経験ができて楽しかったです。
それに、獣医さんの苦労を少し理解できました。
※終わってから、ちゃんとアルコール等で消毒は行いましたよ!!
はじめまして。
面白い写真ですね。私はこのような撮影をしたことは、ありません。
いい経験ですね.
Asagaoさん、はじめまして!
もしかして、同業者でしょうか(笑)
私のペットであるハリネズミのかかりつけ病院の獣医さんは、犬にかかわらず、動物のきれいなレントゲンを撮影していました。
さすがはプロだなと感じつつ、私も人様に対しての撮影技術を向上していきたいと感じておりますm(_ _)m